この記事では女性医師の離職率についてまとめています。
「続けられるかな?」
いろいろな場面で女性医師は、キャリアについて考えます。
診療科を選ぶとき、結婚するとき、子供ができた時。
結婚しない、子供を持たないという選択肢をとる女性医師にとっても。
女性医師の離職率の高さは医療現場の大きな問題であり、その背景にはジェンダーギャップやワークライフバランスの課題が存在しています。
本記事では、女性医師のキャリアと離職率の関係について、統計データと共に深く解説していきます。
女性医師の離職率
まずは女性医師の離職率を見てみましょう。
女性医師の7割は常勤医を辞めたことがある
2014年の医学教育の報告によると、女性医師の約半数が離職を経験したことがあり、卒後10年以内に集中しています。
理由の多くが「出産・子育て」に伴うものとわかっています。
卒後10年は、年齢としても20代から30代の人が多く、ライフイベントが多い時期です。
長時間労働が基本になっている医師は、辞めざるを得ないというのが残念ながら現実として未だあります。
m3.comによると、医師自体を辞めていなくても、常勤医という働き方をやめたことがある人は7割にものぼります。
医師という職業と家庭・子育てを両立する事が
いかに難しいかがわかりますね。
女性医師が離職する理由
女性医師が離職する理由は以下の通り
- 出産や育児 51.5%
- 夫の転勤 21.1%
- 病気
- 介護
女性医師が離職する理由の最も多いものは「出産や育児」であり、次に多い理由が「夫の転勤」。
この2つだけで7割を超えます。
つまり、ライフイベントによる離職が多いことがわかります。
医学教育 2014,45(5):365~375
教育実践研究
女性医師の離職と復職に関する現状と課題:
岡山大学卒業生及び同大学臨床系講座入局者のアンケート調査より 片岡仁美ら
今回参考にしたデータは2014年のものであり、約10年前です。
しかし、実感として女医の離職理由のtop2は変わっていないでしょう。
女性医師の離職率はワークライフバランスの影響が大きい
女性医師の離職率は、ワークライフバランスが重要なテーマであることがわかりました。
家庭や育児との両立ができるかが離職率に影響を与えます。
両立に対し、求めるものが「当直なし」や保育支援関係などの物理的な支援内容よりも,「家族のサポート」,
「上司の理解」,「同僚の理解」「家族の理解」などのソフト面での支援が重要とする意見が多く見られることからも、両立には精神的なサポートも必要だとわかります。
この問題は個人の問題だけではなく、女性医師の多い科は存続問題にもなっています。
現代では男性医師も求める人が増えており、社会的な問題と言えます。
女性医師の離職時期-結婚とキャリア-
女性医師は結婚や出産の時に、キャリア継続が難しいと感じます。
特に、出産を機に離職する人が多くなります。
子育て中に長時間労働や、責任の大きい仕事をすることが非常に難しいからです。
出産・育児中の労働時間の調整や、勤務形態の変更など、ハード面を整えることが必須です。
これらを実現するためには、病院側の仕組みはもちろんのこと、上司・同僚の理解が必要になります。
女性医師の離職率と産休・育休取得の実態
まず産休・育休が取得できるか。
取得する制度があっても、周りが取得することを当然と思えているか。
10年前の調査では、育児休業 を取得したのは 27.2%と3割に満ちていません。
取得したかったが、取得できなかった人が50%、育休は必要な制度であると回答したのが 77.5%でした。
今は育休が無い病院はほとんどないと思いますが、医局の人事の都合で育休が取れない、取得すると給料がゼロになる、など制度はあるものの実情は伴っていない印象です。
また、産休や育休を取得した後のキャリアに不安を覚えることも少なくありません。
産休・育休制度があっても、早めに復帰したり取得しない医師の割合が意外と多いです。
これは、代わりの医師の確保の困難さ、継続的な研修が必要な医師としてのスキル維持の問題、復帰後のポジションの不透明さなど、多岐にわたる不安点があるためです。
これらの課題を克服し、実情に合った制度利用をもっと推進していくべきでしょう。
女性医師の時短勤務制度の利点と課題
時短勤務制度は、ワークライフバランスを実現するための重要なオプションの一つです。
時短勤務によって、子育ての時間を確保しつつ、医師としてのキャリアを継続できる可能性があります。
しかし、時短勤務の医師に対する周囲の理解不足や、昇進や給与面でのペナルティなどの問題点も指摘されています。医療現場での時短勤務制度が一層、活用されるためには、仕事の効率化や働き方改革が必要不可欠でしょう。
女性医師の離職率と復職支援の現状
女性医師がキャリアを継続するには、復職支援の充実は不可欠です。
しかし現状では、実施されている制度が十分とは言えません。
制度の充実だけでなく、個々に合わせた対応が必要です。
子持ちの女性医師と言っても、パートナー・実家・住んでいる地域によって、働き方は様々です。
女性が復職後も安定したキャリアを築くためには、仕事と家庭のバランスをどう取るかが重要なポイントになります。
女医の離職と産休・育休からの復職支援
女医の産休・育休制度利用率は、他の職種に比べて低く、利用しても期間が短い傾向にあります。
置きかえの人材を確保することが困難で、職場から早期復帰を迫られることもあるからです。
スキル維持のために、早期に復職したいと望む女医もいます。
復帰後のサポートが手薄であり、以前と同じように働くことをもとめられるため、スキル維持をしたいと思うのも当然でしょう。
職場復帰しても、子育てとの両立で満足する仕事ができないという声がしばしば聞かれます。
長時間勤務が基本となっており、子育てと両立できるようにデザインされていないからです。
つまり、女医の離職を下げるには復職支援が重要になります。
病院における復職支援制度の重要性
復職した際の、病院側の支援制度も重要です。
復職する=働く医師のある女医を、離職させないようにするには、まずは支援制度が必須です。
- 保育園
- 一時預かり制度
- 病児保育
- シッター補助
- 時短勤務
- フレックスタイム制度
- 時間外勤務の短縮化
- 業務の効率化
この辺りは必須と言えます。
しかし、現状では十分なサポートを受けられる病院は非常に少ないでしょう。
子供が感染症で保育園を数日休まなければならない時、一時預かりやシッター補助があれば勤務できます。
一時預かりがあれば、保育園が休みの日も働ける可能性が出てきます。
復職時に突然元のように働くことを求めるのではなく、研修期間があればスムーズでしょう。
時短勤務をとるとキャリアの道が閉ざされることも多いですが、時間外の業務を減らしたり、業務を効率化することで、時短勤務やフレックスタイムでも働ける人が増えます。
女性医師以外にもプラスになると思いますが、なかなか整わないのが現実です。
女医の離職率は高いがキャリアアップ志向の女医もいる
女医の離職率は依然として高いですが、本当はキャリアアップをしていきたいと考えている女医も少なからずいます。
優先順位は子育てが最も高いけれど、できることなら仕事も頑張ってキャリアアップしたいと考える女医です。
その挑戦は非常に難しい道のりです。
しかし、医療現場のみならず、社会全体にとってもポジティブな影響を与えます。
女性医師は、長時間労働や夜間当直など、厳しい労働環境の中で専門性を高めながら、リーダーシップを発揮する場を求めています。多くの女性医師が、両立するための知見や経験を共有し、支え合うことで、キャリアの模索は進んでいるのです。
女医の上昇志向と現実とのギャップによる離職
女性医師が抱く上昇志向が、現実の壁にぶつかることは少なくありません。
一例として、管理職への昇進が挙げられます。
統計によると、医療現場における女性の管理職比率は日本では依然として低く、そのギャップは年々クリアが困難になっています。これは、キャリアアップの機会が男性に比べて限られているひとつの証であり、また女性医師が直面するメンタルヘルスの問題やワークライフバランスの難しさにも繋がる問題です。
キャリアアップを望む女性にとって、現実とのギャップで離職する人も少なくありません。
キャリアプランニングにおいて、実現可能な目標設定やメンターシップの重要性など、現実に根差したアプローチが必要不可欠でしょう。
女性医師の離職率を下げるために
女性医師のキャリア継続を支援し、離職率の減らすには、具体的な施策が必要です。
まず、現状の女性医師が直面する問題点を踏まえ、それらを解消する方向性を明らかにすることが重要でしょう。女性医師が長く働き続けるためには、勤務条件の整備はもちろん、キャリア形成を支えるさまざまなプログラムの充実が不可欠です。
今後の日本の医療現場において、女性医師のキャリア継続は必須だと思います。
夫婦共働きのパラダイムシフト
昨今の社会において、夫婦共働きはますます一般的になってきています。
特に女性医師においては、夫婦で双方が専門職というケースも多く見受けられますが、そのような家庭における仕事と生活のバランスの取り方にパラダイムシフトが求められています。
たとえば、育児に対する男性の積極的な関与や家事分担の推進、そして職場の理解と柔軟な勤務形態の確立が挙げられます。男性の家庭への積極的な参加を職場が理解することも重要です。
共働き、医師夫婦の共働きに対してパラダイムシフトが必要な時代です。
仕事と家庭の平和な共存戦略
女医が仕事と家庭を両立するためには、個人の努力だけではなく、職場環境や社会制度の整備が不可欠です。
柔軟な勤務時間の設定。
非常勤・時短勤務でもキャリアを積める制度と理解。
また、育児や介護といった家庭の事情に対する理解を深めるための職場環境の改善や意識改革も不可欠です。
女医だけでなく、全医師にメリットがある改革です。
先進国の女医離職率から学ぶ制度
女性医師支援策の成功例としては、スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国がしばしば注目されます。
これらの国々は、高水準の育児休暇制度、柔軟な勤務形態、そして女性リーダー育成のための活動を積極的に行っています。
その結果、女性医師の労働環境やキャリアの継続性が高いことが明らかになっています。
日本にそのまま適用するには調整が必須ですが、参考になることは間違いありません。
まとめ
- 女医の7割が常勤を辞めたことがある。
- 辞める理由のtop2は10年前から出産・結婚。
- 女医の離職率を下げるには制度の充実とソフト面の充実どちらも必要。
ここからは私の呟きになりますが・・
男女関わらず、理由関わらず、キャリアをstopする可能性はある。
それに対して、復職したときのサポート、例えば1ヶ月はサブに回って思い出す期間。
その中で時間の制限を考えて自分ができる範囲を考える。
チーム(科)長と話し合って、仕事の内容をある程度すり合わせる。
男女関わらず、昼から出勤するシフトも作る。
時間外・休日に働くことを前提としない。
時間外・休日に働けないから重要なポストや重要ない仕事に就けない
そんな風潮をなくす。
こんな流れになればいいのになぁ・・なんて思ったりします。
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